Date: 2016年5月23日

連続講座第3回「大仏様の来た道」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。

比較研究の必要性

比較研究とは?

何を比較するのか?

現在までの比較研究の進捗状況

第3回の内容

第3回は、平成28年3月27日(日曜日)に、「大仏様の来た道」をテーマにして、大仏殿高徳院境内を見学し、その後、客殿でスライド等を使いながら、鎌倉大仏の歴史や特徴、さらに発掘調査結果等についての説明を行いました。

第3回は、天候にも恵まれ103名の方が参加されました。

大仏01

境内での実地解説の様子


大仏02


大仏04


大仏03

【第2部】中間報告

鎌倉国宝館副館長の内藤浩之より平成26年度、27年度に実施している比較研究についてスライド等を用いながら以下の報告を行いました。

  • 鎌倉大仏との比較研究先である中国の雲崗石窟、龍門石窟、敦煌莫高窟、楽山大仏、大足石刻について、調査地の概要の説明。
  • 大仏の定義について、仏像の大きさを経典等に書かれたことから読み解いた説明。調査対象は10m前後以上とした。
  • 鎌倉大仏と比較研究を行った中国の作例との比較についての報告。
  • 大仏の来た道としては、北伝ルートと南伝ルートがあるが、仏教及び仏像が発生したインドには大仏がほとんど存在せず、聖地に対する周辺意識や権力・経済力が大仏の造像に大きく関係していると考えられる。
大仏スライド02

高徳院 佐藤ご住職よりご挨拶


客殿

100名以上の参加者で熱気のみなぎる会場内(客殿)


鎌倉国宝館内藤副館長

鎌倉国宝館 内藤副館長によるスライド解説

現時点のまとめと課題としては、以下の点が挙げられます。

  1. 鎌倉大仏は北伝ルートで伝来した巨大仏信仰のアジア東端の作例として貴重であること。
  2. 課題として、国内作例との比較や大仏造立にかかわる思想、配置、礼拝者との関係をさらに研究していく必要があること。

>>連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について
>>連続講座第2回「禅宗様建築の成立と発展」の実施結果について
>>連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について

連続講座第2回「禅宗様建築の成立と発展」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。

比較研究の必要性

比較研究とは?

何を比較するのか?

現在までの比較研究の進捗状況

第2回の内容

第2回は、平成28年2月21日(日曜日)に、「禅宗様建築の成立と発展」をテーマにして、円覚寺境内で山門や仏殿、舎利殿を見学し、その後、大書院でスライド等を使いながら、中国や国内の建築物との比較研究成果についての報告を行いました。

第1回に引き続き、定員を上回る応募があり、88名の方が熱心に講座を受講されました。

円覚寺境内

【第1部】実地解説

境内(山門、仏殿、舎利殿)を案内しながら、以下の点について解説を行いました。

  • 禅宗様建築について、山門、仏殿の各部位の説明。
  • 舎利殿の見学(外から)。

円覚寺境内


円覚寺舎利殿

舎利殿へ向かう途中、熱心に解説に耳を傾ける参加者の方々


円覚寺山門での実地解説

山門での実地解説

【第2部】中間報告

鎌倉市歴史まちづくり推進担当担当部長の桝渕規彰より平成26年度、27年度に実施している比較研究についてスライド等を用いながら以下の報告を行いました。

  • 舎利殿と国内外で現地調査を行った禅宗様建築、特に方三間の建築について詳細比較した成果について、比較表を見ながらの説明。
  • 中国の建築物との共通点と国内で舎利殿前後に造られた建築物との相違点についての説明。
  • 舎利殿と比較した国内外の建築物について、スライドの写真を用いながらの説明。国内の建築物については、4つの類型に分類。
円覚寺 朝比奈教学部長よりご挨拶

円覚寺 朝比奈教学部長よりご挨拶


円覚寺スライドそその1


円覚寺スライドその2

大書院にて、スライドを使用しての比較研究報告

現時点でのまとめとしては、以下の3点が挙げられます。

  1. 日本の禅宗様建築は、中国、特に江蘇省、浙江省の北宋から元にかけての時代の建築様式の諸要素を取り入れて成立した。
  2. 15世紀前半に建築された円覚寺舎利殿は、先行する永保寺観音堂や功山寺仏殿などの様式を、さらに繊細かつ精巧に進化させた禅宗様建築の典型・完成形と評価できる。
  3. 禅宗様建築は、円覚寺舎利殿を典型として、室町時代中期以降の安国寺釈迦堂、東光寺薬師堂、不動院金堂などに様式的変化(省略等)を伴いながら引き継がれ、日本における寺院建築様式として一般化し全国に拡散した。

>>連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について
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>>連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について

連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。

比較研究の必要性

比較研究とは?

何を比較するのか?

現在までの比較研究の進捗状況

第1回の内容

第1回は、平成27年11月15日(日曜日)に「鎌倉から始まった禅宗寺院」をテーマにして、建長寺境内で禅宗寺院や庭園などを見学し、その後、応供堂にてスライド等を使いながら国内外類似資産との比較研究成果についての報告を行いました。

あいにくの天気でしたが、96名の方々が参加されて、たいへん熱のこもった講座となりました。

雨の中の参加者の様子

【第1部】実地解説

境内(山門、仏殿、法堂)を案内しながら、以下の点について解説を行いました。

  • 元弘元年(1331年)につくられた「建長寺指図」を見ながら、当時から主要伽藍が一直線上に並んでおり、現在も維持されていること。
  • 建長寺は、谷戸地形で平地が少ないため、山裾を垂直に切り下げ、中央部を埋め立てて敷地を確保する谷戸造成によって造られていること。
建長寺01

実地解説の様子


建長寺03

【第2部】中間報告

鎌倉市歴史まちづくり推進担当担当部長の桝渕規彰より平成26年度、27年度に実施していた比較研究についてスライド等を用いながら以下の点について報告しました。

  • 建長寺については、立地・造成、伽藍配置について、国内外の類似資産との比較研究を行った。
  • 比較を行った他寺院との相違点は、主に2点あること。狭隘な谷戸に立地し、山裾を垂直に切り落として境内を確保する造成は、鎌倉の寺院固有の立地及び造成法であること。さらに、方丈裏の曲池を伴う庭園は、建長寺から発生した日本独自のあり方である。
  • 比較を行った他寺院との共通点として、一直線上の主要伽藍の配置が挙げられる。京都五山をはじめとする国内大禅宗寺院は、南宋五山から導入された建長寺の伽藍配置に倣ったものである。
  • 現時点でのまとめとしては、建長寺の直線的な主要伽藍配置は、中国南宋五山との交流によって導入され、方丈裏庭園という新規の要素を交えて、我が国における伽藍配置の基本的在り方として大禅宗寺院に取り入れられ、現在も維持されている。この意味において、建長寺は日本における禅宗寺院の始まりである。
スライド02

建長寺 高井総長(当時)よりご挨拶


スライド03

神奈川県 人見部長より開会の挨拶


スライド01

応供堂にて中間報告をする桝渕部長


応供堂全体

応供堂の外観の様子


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