Author: 神奈川県・横浜市・鎌倉市・逗子市世界遺産登録推進委員会 (page 2 of 3)

連続講座第3回「大仏様の来た道」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。

比較研究の必要性

比較研究とは?

何を比較するのか?

現在までの比較研究の進捗状況

第3回の内容

第3回は、平成28年3月27日(日曜日)に、「大仏様の来た道」をテーマにして、大仏殿高徳院境内を見学し、その後、客殿でスライド等を使いながら、鎌倉大仏の歴史や特徴、さらに発掘調査結果等についての説明を行いました。

第3回は、天候にも恵まれ103名の方が参加されました。

大仏01

境内での実地解説の様子


大仏02


大仏04


大仏03

【第2部】中間報告

鎌倉国宝館副館長の内藤浩之より平成26年度、27年度に実施している比較研究についてスライド等を用いながら以下の報告を行いました。

  • 鎌倉大仏との比較研究先である中国の雲崗石窟、龍門石窟、敦煌莫高窟、楽山大仏、大足石刻について、調査地の概要の説明。
  • 大仏の定義について、仏像の大きさを経典等に書かれたことから読み解いた説明。調査対象は10m前後以上とした。
  • 鎌倉大仏と比較研究を行った中国の作例との比較についての報告。
  • 大仏の来た道としては、北伝ルートと南伝ルートがあるが、仏教及び仏像が発生したインドには大仏がほとんど存在せず、聖地に対する周辺意識や権力・経済力が大仏の造像に大きく関係していると考えられる。
大仏スライド02

高徳院 佐藤ご住職よりご挨拶


客殿

100名以上の参加者で熱気のみなぎる会場内(客殿)


鎌倉国宝館内藤副館長

鎌倉国宝館 内藤副館長によるスライド解説

現時点のまとめと課題としては、以下の点が挙げられます。

  1. 鎌倉大仏は北伝ルートで伝来した巨大仏信仰のアジア東端の作例として貴重であること。
  2. 課題として、国内作例との比較や大仏造立にかかわる思想、配置、礼拝者との関係をさらに研究していく必要があること。

>>連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について
>>連続講座第2回「禅宗様建築の成立と発展」の実施結果について
>>連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について

連続講座第2回「禅宗様建築の成立と発展」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。

比較研究の必要性

比較研究とは?

何を比較するのか?

現在までの比較研究の進捗状況

第2回の内容

第2回は、平成28年2月21日(日曜日)に、「禅宗様建築の成立と発展」をテーマにして、円覚寺境内で山門や仏殿、舎利殿を見学し、その後、大書院でスライド等を使いながら、中国や国内の建築物との比較研究成果についての報告を行いました。

第1回に引き続き、定員を上回る応募があり、88名の方が熱心に講座を受講されました。

円覚寺境内

【第1部】実地解説

境内(山門、仏殿、舎利殿)を案内しながら、以下の点について解説を行いました。

  • 禅宗様建築について、山門、仏殿の各部位の説明。
  • 舎利殿の見学(外から)。

円覚寺境内


円覚寺舎利殿

舎利殿へ向かう途中、熱心に解説に耳を傾ける参加者の方々


円覚寺山門での実地解説

山門での実地解説

【第2部】中間報告

鎌倉市歴史まちづくり推進担当担当部長の桝渕規彰より平成26年度、27年度に実施している比較研究についてスライド等を用いながら以下の報告を行いました。

  • 舎利殿と国内外で現地調査を行った禅宗様建築、特に方三間の建築について詳細比較した成果について、比較表を見ながらの説明。
  • 中国の建築物との共通点と国内で舎利殿前後に造られた建築物との相違点についての説明。
  • 舎利殿と比較した国内外の建築物について、スライドの写真を用いながらの説明。国内の建築物については、4つの類型に分類。
円覚寺 朝比奈教学部長よりご挨拶

円覚寺 朝比奈教学部長よりご挨拶


円覚寺スライドそその1


円覚寺スライドその2

大書院にて、スライドを使用しての比較研究報告

現時点でのまとめとしては、以下の3点が挙げられます。

  1. 日本の禅宗様建築は、中国、特に江蘇省、浙江省の北宋から元にかけての時代の建築様式の諸要素を取り入れて成立した。
  2. 15世紀前半に建築された円覚寺舎利殿は、先行する永保寺観音堂や功山寺仏殿などの様式を、さらに繊細かつ精巧に進化させた禅宗様建築の典型・完成形と評価できる。
  3. 禅宗様建築は、円覚寺舎利殿を典型として、室町時代中期以降の安国寺釈迦堂、東光寺薬師堂、不動院金堂などに様式的変化(省略等)を伴いながら引き継がれ、日本における寺院建築様式として一般化し全国に拡散した。

>>連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について
>>連続講座第3回「大仏様の来た道」の実施結果について
>>連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について

連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。

比較研究の必要性

比較研究とは?

何を比較するのか?

現在までの比較研究の進捗状況

第1回の内容

第1回は、平成27年11月15日(日曜日)に「鎌倉から始まった禅宗寺院」をテーマにして、建長寺境内で禅宗寺院や庭園などを見学し、その後、応供堂にてスライド等を使いながら国内外類似資産との比較研究成果についての報告を行いました。

あいにくの天気でしたが、96名の方々が参加されて、たいへん熱のこもった講座となりました。

雨の中の参加者の様子

【第1部】実地解説

境内(山門、仏殿、法堂)を案内しながら、以下の点について解説を行いました。

  • 元弘元年(1331年)につくられた「建長寺指図」を見ながら、当時から主要伽藍が一直線上に並んでおり、現在も維持されていること。
  • 建長寺は、谷戸地形で平地が少ないため、山裾を垂直に切り下げ、中央部を埋め立てて敷地を確保する谷戸造成によって造られていること。
建長寺01

実地解説の様子


建長寺03

【第2部】中間報告

鎌倉市歴史まちづくり推進担当担当部長の桝渕規彰より平成26年度、27年度に実施していた比較研究についてスライド等を用いながら以下の点について報告しました。

  • 建長寺については、立地・造成、伽藍配置について、国内外の類似資産との比較研究を行った。
  • 比較を行った他寺院との相違点は、主に2点あること。狭隘な谷戸に立地し、山裾を垂直に切り落として境内を確保する造成は、鎌倉の寺院固有の立地及び造成法であること。さらに、方丈裏の曲池を伴う庭園は、建長寺から発生した日本独自のあり方である。
  • 比較を行った他寺院との共通点として、一直線上の主要伽藍の配置が挙げられる。京都五山をはじめとする国内大禅宗寺院は、南宋五山から導入された建長寺の伽藍配置に倣ったものである。
  • 現時点でのまとめとしては、建長寺の直線的な主要伽藍配置は、中国南宋五山との交流によって導入され、方丈裏庭園という新規の要素を交えて、我が国における伽藍配置の基本的在り方として大禅宗寺院に取り入れられ、現在も維持されている。この意味において、建長寺は日本における禅宗寺院の始まりである。
スライド02

建長寺 高井総長(当時)よりご挨拶


スライド03

神奈川県 人見部長より開会の挨拶


スライド01

応供堂にて中間報告をする桝渕部長


応供堂全体

応供堂の外観の様子


>>連続講座第2回「禅宗様建築の成立と発展」の実施結果について
>>連続講座第3回「大仏様の来た道」の実施結果について
>>連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について

(募集終了)連続講座「鎌倉の文化財、その価値と魅力~比較研究から見えたもの~(中間報告)」第3回 「大仏様の来た道」参加者募集

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告します。

第3回は、高徳院境内で大仏について実地に解説し、その後、客殿にてスライド等を使いながら国内外類似資産との比較研究成果について報告します。ぜひご参加ください。

 

【第3回の詳細】

1 開催日時 平成28年3月27日 日曜日 午前10時から正午

2 開催場所 高徳院

3 募集人数 100人

4 参加費  無料(拝観料200円が必要。)

 

【応募方法】

住所・氏名・電話番号・ファックス番号またはEメールアドレス(あれば)を記載の上、郵送、ファクス、Eメールか直接、3月16日(必着)までに鎌倉市歴史まちづくり推進担当へ。

(電話:0467-61-3849、FAX: 0467-23-1085、E-mail:rekimachi@city.kamakura.kanagawa.jp)

応募者多数の場合は抽選。結果は3月18日までに応募者全員に通知します。

連続講座のチラシはこちら

申込書はこちら

 

鎌倉大仏

鎌倉大仏

(募集終了)連続講座「鎌倉の文化財、その価値と魅力~比較研究から見えたもの~(中間報告)」第2回 「禅宗様建築の成立と発展」参加者募集

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回予定)として中間報告します。

第2回は、円覚寺境内で禅宗様建築などを実地に解説し、その後、大書院にてスライド等を使いながら国内外類似資産との比較研究成果について報告します。ぜひご参加ください。

※ただし、舎利殿は防災設備工事中のため拝観できません。

【第2回の詳細】

1 開催日時 平成28年2月21日 日曜日 午前10時から正午

2 開催場所 円覚寺

3 募集人数 100人

4 参加費  無料(拝観料300円が必要。)

【応募方法】

住所・氏名・電話番号・ファックス番号またはEメールアドレス(あれば)を記載の上、郵送、ファクス、Eメールか直接、2月12日(必着)までに鎌倉市歴史まちづくり推進担当へ。

(電話:0467-61-3849、FAX:0467-23-1085、E-mail:rekimachi@city.kamakura.kanagawa.jp)

応募者多数の場合は抽選。結果は2月17日までに応募者全員に通知します。

チラシはこちら

申込書はこちら

円覚寺山門2

円覚寺山門

(募集終了)講演会「歴史的遺産と共生する、これからのまちづくり~世界遺産のあるまちをめざして~」参加者募集について

「鎌倉」の世界文化遺産への再推薦・登録に向け、神奈川県・横浜市・鎌倉市・逗子市世界遺産登録推進委員会では「歴史的遺産と共生する、これからのまちづくり」をテーマに講演会を開催します。「鎌倉」がこれから取り組むべきことについて、文化財保存修理会社社長で観光や文化財の活用について多くの著作があるデービッド・アトキンソン氏に講演いただきます。また、社寺関係者等とのパネルディスカッションを通じてこれからのまちづくりに必要なことを明らかにします。併せて、県立鎌倉高等学校生徒による、「かまくら学」の研究発表も行う予定です。

◆開催日…平成28年2月11日(木)午後1時から4時まで(開場は12時30分)

◆場所…鎌倉生涯学習センター(きらら鎌倉)ホール(JR鎌倉駅東口徒歩3分)

◆出演者(予定)…デービッド・アトキンソンさん(小西美術工藝社社長)、佐藤孝雄さん(鎌倉大仏殿高徳院住職)、朝比奈惠温さん(浄智寺住職)、仲田順昌さん(覚園寺副住職)、加藤健司さん(鶴岡八幡宮教学研究所所長)

◆申込方法…①催事名「歴史的遺産と共生する、これからのまちづくり~世界遺産のあるまちをめざして~」係②氏名(ふりがな)③住所④連絡先(電話番号、ファックス番号、Eメールアドレス)⑤複数名の場合、同行者の名前(ふりがな)を記載し、Eメール、ファックスでお申し込みください。

◆申込先…鎌倉市歴史まちづくり推進担当…電話 0467(61)3849 FAX…0467(23)1085

Eメール…rekimachi@city.kamakura.kanagawa.jp

◆申込受付終了日…平成28年1月28日(木)必着(先着240名。定員になり次第締切)*平成28年2月4日(木)までに応募者全員へ、応募結果をEメール、ファックス等でお知らせします。

◆参加料…無料

講演会のチラシはこちら

atokinson

【デービッド・アトキンソン氏略歴】

1965年イギリス生まれ、50歳

1983年オックスフォード大学 日本学専攻

1987年アンダーセン・コンサルティング、1990年ソロモンブラザーズ証券会社を経て、1992年ゴールドマンサックス証券会社入社。1998年Managing director(取締役)、2006年 Partner(共同出資者)となるが、2007年退社。

2009年㈱小西美術工藝社入社、2010年代表取締役会長就任、2011年代表取締役会長兼社長、2014年代表取締役社長就任、現在に至る。

1999年 裏千家入門 現在 茶名「宗真(そうしん)」を拝受

2015年~ 日本遺産審査委員会委員(主催:文化庁)

2015年5月 京都国際観光大使就任

2015年9月 山本七平賞受賞(PHP研究所)

著書に、「銀行不良債権からの脱却」( 日本経済新聞社)、「イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る 雇用400万人、GDP8パーセント成長への提言」(講談社+α新書)、「新・観光立国論」(東洋経済新報社)、「イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」」 (講談社+α新書)

(募集終了)連続講座第1回「鎌倉の文化財、その価値と魅力~比較研究から見えたもの~(中間報告)」

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回予定)として中間報告します。

第1回は、「鎌倉から始まった禅宗寺院」をテーマに、建長寺境内で禅宗寺院や庭園などを実際に見学し、その後、応供堂にてスライド等を使いながら国内外類似資産との比較研究成果について報告します。ぜひご参加ください。

 

【第1回の詳細】

1 開催日時 平成27年11月15日 日曜日 午前10時から正午

2 開催場所 建長寺

3 募集人数 50人

4 参加費  無料(建長寺拝観料300円が必要。)

 

【応募方法】

住所・氏名・電話番号・ファックス番号またはEメールアドレス(あれば)を記載の上、郵送、ファクス、Eメールか直接、11月10日(必着)までに歴史まちづくり推進担当へ。

(電話:0467-61-3849、FAX:0467-23-1085、

E-mail:rekimachi@city.kamakura.kanagawa.jp)

応募者多数の場合は抽選。結果は11月13日までに応募者全員に通知します。

kentyozisanmon

概要を記載したチラシはこちら

参加申込書(ワード版)はこちら

平成26年度現地調査 海外-3 <中国>世界文化遺産「雲崗石窟」

調査日:平成27年2月7日
調査地:雲曜五窟(雲崗石窟第16~20窟)他(山西省大同市)

(1)資産概要
 雲崗石窟は中華人民共和国山西省大同市に所在する世界文化遺産で、2000年に推薦書が提出、2000年に、世界遺産一覧表に記載されている。
 大同市の西方16キロメートルに位置し、東西に約1キロメートルに渡り石窟が存在している。252の様々な石窟と51,000体以上の仏像彫刻からなる。
 雲崗石窟は約1500年前の北魏王朝の時代に開かれた。北魏代の和平元年(460)、沙門統(宗教長官)に就任した僧侶・雲曜(どんよう)が時の文成帝に上奏し、文成帝までの5人の皇帝を供養するために石窟を開くことになったことが始まりである。
「鎌倉」の資産が、大仏、やぐらの中国から日本への伝播、東アジア文化圏内での価値観の交流を示すものであることを検証する資料等を収集するために、現地調査を行ったものである。
 評価基準はⅰ)、ⅱ)、ⅲ)、ⅳ)により登録されている。

【主な構成資産】

 雲崗石窟 参道 その2(雲崗石窟 参道 その2)

雲崗石窟 参道 その3(雲崗石窟 参道 その3)

雲崗石窟 第3窟 その1(雲崗石窟 第3窟 その1)

雲崗石窟 第3窟 その2(雲崗石窟 第3窟 その2)

雲崗石窟 第3窟 その3(雲崗石窟 第3窟 その3)

雲崗石窟 第16窟 その1(雲崗石窟 第16窟 その1)

雲崗石窟 第16窟 その2(雲崗石窟 第16窟 その2)

雲崗石窟 第16窟 その3(雲崗石窟 第16窟 その3)

雲崗石窟 第16窟 その4(雲崗石窟 第16窟 その4)

雲崗石窟 第19窟 その1(雲崗石窟 第19窟 その1)

雲崗石窟 第19窟 その2(雲崗石窟 第19窟 その2)

雲崗石窟 第19窟 その3(雲崗石窟 第19窟 その3)

雲崗石窟 第19窟 その4(雲崗石窟 第19窟 その4)

第20窟 正面遠景(雲崗石窟 第20窟 正面遠景)

第20窟 正面(雲崗石窟 第20窟 正面)

第20窟 左側面(雲崗石窟 第20窟 左側面)

第20窟 頭部拡大(雲崗石窟 第20窟 頭部拡大)

(2)調査結果
ア 大仏の伝播について
・インドから中国への仏像の伝播において、インドや中央アジアの影響を受けながら、中国史上初めて国家事業として大規模な石窟群であり、「皇帝即如来」という思想を表している資産として、特徴を有している。初期から中期にかけて、丸顔、肥満形、薄手の衣から、面長、痩せ形、厚手の衣の様式が変わり、仏像の漢民族化、双窟の出現による様式の変化(祖霊供養の意味合いを失う)などを確認し、顔、衣等の点での鎌倉大仏との相違点等を確認した。

イ 資産の管理保全状況等について
・入場口、チケットセンター、雲崗石窟までの参道などが非常に整備されていることを確認した。(但し、整備については国家文物局より意見があったようである。)「雲崗石窟 西暦五世紀における仏教寺院の考古学的調査報告」(昭和26年~31年刊行・水野清一ほか)当時の写真と比べると、磨耗が進んでいるが、反対に、第20窟本尊の胴体部分などでは、当時欠けていた部分が修復されているなど、修復されている部分も多い。石窟の外壁表面部分はモルタル等で固めているところが多く、風化を保護していることも確認した。

第20窟 胴体部分(雲崗石窟 第20窟 胴体部分)

まとめ:
 「鎌倉」の資産と実地において調査・比較を行うことにより、「鎌倉」の新たなコンセプトの策定に向けて、下記の点に関する基礎的な資料・知見の収集を行うことが出来た。

・「鎌倉」の資産が、大仏、やぐらの中国から日本への伝播、東アジア文化圏内での価値観の交流を示すものであることを検証するための資料の収集

 また、資産の実際の保全管理状況、観光圧力への対応、来訪者への資産の価値の伝達方法等について確認し、「鎌倉」の今後の保全管理等の検討への基礎的な資料・知見の収集を行うことが出来た。

平成26年度現地調査 海外-2 <中国>世界文化遺産「龍門石窟」

調査日:平成27年2月4日~2月5日
調査地:賓陽三洞、磨崖三仏、万仏洞、奉先寺洞他(河南省洛陽市)

(1)資産概要
 龍門石窟は中華人民共和国河南省洛陽市に所在する世界文化遺産で、1999年に推薦書が提出、2000年に、世界遺産一覧表に記載されている。
 中国の歴史的都市である洛陽市の南方12キロメートルに位置し、伊川の両岸の丘の斜面に約1キロメートルに渡り石窟が存在している。東西に2,345窟にのぼり、約10万体の仏像彫刻を有する。丘は石灰岩から成り、繊細な表現が可能となっている。
龍門石窟は約1500年前の北魏王朝の時代に開かれた。北魏王朝は北方の遊牧民族で、当初、平城(現山西省大同市)郊外に雲崗石窟を開いた。その後、第六代皇帝孝文帝の太和18年(西暦494年)に洛陽に遷都が行われ、龍門石窟が開かれたのもこの頃と言われている。
 「鎌倉」の資産が、大仏、やぐらの中国から日本への伝播、東アジア文化圏内での価値観の交流を示すものであることを検証する資料等を収集するために、現地調査を行ったものである。
 評価基準はⅰ)、ⅱ)、ⅲ)により登録されている。

【主な構成資産】

 龍門石窟 賓陽三洞(龍門石窟 賓陽三洞)

龍門石窟 賓陽中洞 その1(龍門石窟 賓陽中洞 その1)

龍門石窟 賓陽中洞 その2(龍門石窟 賓陽中洞 その2)

龍門石窟 奉先寺洞 その1(龍門石窟 奉先寺洞 その1)

龍門石窟 奉先寺洞 その2(龍門石窟 奉先寺洞 その2)

龍門石窟 奉先寺洞 その3(龍門石窟 奉先寺洞 その3)

龍門石窟 奉先寺洞 その4(龍門石窟 奉先寺洞 その4)

龍門石窟 奉先寺洞 その5(龍門石窟 奉先寺洞 その5)

龍門石窟 奉先寺洞 その6(龍門石窟 奉先寺洞 その6)

 龍門石窟 奉先寺洞 その7(龍門石窟 奉先寺洞 その7)

龍門石窟 奉先寺洞 その8(龍門石窟 奉先寺洞 その8)

龍門石窟 奉先寺洞 その9(龍門石窟 奉先寺洞 その9)

龍門石窟 奉先寺洞 その10(龍門石窟 奉先寺洞 その10)

(2)調査結果
ア 大仏の伝播について
・インドから中国への仏像の伝播において、雲崗石窟に引き続き作られている。堅い石灰質岩を生かして、雲崗石窟と比べて繊細な表現となっている。北魏代から唐代にかけて、顔つきがふくよかに変化していることなどを確認し、顔、衣等の点での鎌倉大仏との相違点等を確認した。
   
イ 資産の管理保全状況等について
・柵の設置等により、資産は保護されているが、龍門石窟の研究(昭和16年刊行・水野清一ほか)当時の写真と比べ、一部は磨耗が進んでいることが確認された。主要な洞には中、英、日、仏、韓の多国語の解説パネル(手で持てる程度の大きさ)を置いてあり、資産の価値の伝達にも配慮していることを確認した。また、入場後は一方通行となっており、観光者の動線に配慮されていることを確認した。

潜渓寺 日本語による説明(潜渓寺 日本語による説明)

ウ 意見交換結果
・龍門石窟研究院で意見交換を行い、インド、中国、鎌倉への石窟文化の東漸の可能性や、やぐらとの比較対象として瘞窟(いくつ:石窟の一種)が参考になること、中国国内の他の比較対象について確認した。

まとめ:
 「鎌倉」の資産と実地において調査・比較を行うことにより、「鎌倉」の新たなコンセプトの策定に向けて、下記の点に関する基礎的な資料・知見の収集を行うことが出来た。

・「鎌倉」の資産が、大仏、やぐらの中国から日本への伝播、東アジア文化圏内での価値観の交流を示すものであることを検証するための資料の収集また、資産の実際の保全管理状況、観光圧力への対応、来訪者への資産の価値の伝達方法等について確認し、「鎌倉」の今後の保全管理等の検討への基礎的な資料・知見の収集を行うことが出来た。

平成26年度現地調査 海外-1 <中国>世界文化遺産「『天地の中央』にある登封の史跡群」

調査日:平成27年2月2日~2月4日
調査地:少林寺、会善寺、嵩岳寺塔、嵩陽書院、太室闕、啓母闕、少室闕、周公測景台、観星台(河南省登封市)

(1)資産概要
 「天地の中央」にある登封の史跡群(以下「登封」という。)は中華人民共和国河南省登封市に所在する世界文化遺産で、2001年に暫定資産一覧表に記載され、2008年に推薦書が提出、2010年の第34回世界遺産委員会(ブラジル)において、世界遺産一覧表に記載されている。
 構成資産は8構成資産(11構成要素)からなるシリアルノミネーション(明確に定義されたつながりによって関係づけられた複数の構成資産を持ち、連続体全体として顕著な普遍的価値を有するもの)であり、道教、仏教、儒教、科学技術に関する資産などからなる。多くの種類の資産から構成されていること、山(嵩山)に囲まれていること、禅宗に関連する資産(少林寺)を含む点などが「鎌倉」との共通点として挙げられることから、現地調査を行ったものである。
 評価基準(※)はⅲ)とⅵ)により登録されている。

※世界文化遺産一覧表への評価基準
ⅰ)人間の創造的才能を表す傑作である。
ⅱ)建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
ⅲ)現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
ⅳ)歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、或いは景観を代表する顕著な見本である。
ⅴ)あるひとつの文化(又は複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は、人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である。(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの)
ⅵ)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。

【主な構成資産】
少林寺 山門(少林寺 山門)

少林寺 大雄宝殿(少林寺 大雄宝殿)

少林寺 塔林(少林寺 塔林)

嵩岳寺 塔(嵩岳寺 塔 その1)

嵩岳寺 塔2(嵩岳寺 塔 その2)

嵩陽書院 道統祠(嵩陽書院 道統祠 その1)

嵩陽書院 道統祠2(嵩陽書院 道統祠 その2)

観星台(観星台 その1)

観星台2(観星台 その2)

観星台3(観星台 その3)

中岳廟 遥参亭(中岳廟 遥参亭)

中岳廟 天中閣(中岳廟 天中閣 その1)

中岳廟 天中閣2(中岳廟 天中閣 その2)

 (2)調査結果
ア 禅宗の伝播について
a 少林寺初祖庵
・北宋代の木造建築である、大殿と円覚寺舎利殿を実地調査により比較し、尾垂木のある組物が詰組になっている点で共通しているが、柱の形状が八角であること、裳階がないこと、大瓶束を用いてないことなどの相違点を確認した。

大殿 組物(隅部分)(大殿 組物(隅部分))
b 少林寺塔林
・塔林内に無縫塔を確認し、建長寺の無縫塔との比較を行い、基本的な構成は共通しているが、少林寺の無縫塔は花弁(請花)の彫りが浅い、塔身の曲線が緩やか、柱の太さが太いなどの相違点を確認した。

塔林 無縫塔 正面(塔林 無縫塔 正面)
c 少林寺常住庵
・中軸線上に伽藍が配置されている点で共通点を有するが、各伽藍ごとにひな壇造成を行い、空間が区切られている点が異なる点で異なることを確認した。

イ 各資産とコンセプトの関係について
・中岳廟、嵩陽書院、少林寺等において、唐代等の石碑にも「天地の中央」に関連する記載等(例:会善寺照壁の「天中山」の石刻)があることを確認し、「天地の中央」の概念が歴史的に長い時間をかけて育まれたものであることを確認した。

会善寺照壁 「天中山」の石刻(会善寺照壁 「天中山」の石刻)

 ウ 嵩山と構成資産の関係について
・各構成資産は、基本的に嵩山に対して一直線上に資産が配置されており、さらに左右対称に配置されていることを確認し、仏教に関連する資産以外も中軸線及び左右対称の配置が意識されていることを確認した。

エ 資産の管理保全状況等について
・資産は全般的に良好に保存されており、塔林では、近年柵を設置するなど、厳格化が進められている。資産の説明板(中英日韓の4ヶ国語)、入口の機械などについては、全ての構成資産で仕様が統一されているとことが確認された。

少林寺 塔林2(少林寺 塔林)

オ 意見交換結果
・登封市文物局担当者等と意見交換を実施し、コンセプト変更の経緯、資産管理の取組み等などを確認した。

まとめ:
 「鎌倉」の資産と実地において調査・比較を行うことにより、「鎌倉」の新たなコンセプトの策定に向けて、下記の点に関する基礎的な資料・知見の収集を行うことが出来た。

・「鎌倉」の資産が、禅宗の中国から日本への伝播、東アジア文化圏内での価値観の交流を示すものであることを検証するための資料の収集
・「武家の古都・鎌倉」においては寺院、神社、武家館跡など、多様な資産を含んでいたが、同様に、道教、儒教、仏教等多様な資産が含まれる世界遺産において、物証として、コンセプトと資産の対応関係が示されていること

 また、資産の実際の保全管理状況、観光圧力への対応、来訪者への資産の価値の伝達方法等について確認し、「鎌倉」の今後の保全管理等の検討への基礎的な資料・知見の収集を行うことが出来た。

Older posts Newer posts