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連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座として中間報告しました。

第4回の内容

平成27年度に続く第4回は、平成28年6月26日(日曜日)に、「やぐらの広がり」をテーマにして、鎌倉独特の宗教空間を構成する希有な遺構であるやぐらについての説明を行いました。午前の部・午後の部ともに定員を大幅に上回る応募があり、初夏の暑い中、大勢の方が参加されました。

浄光明寺境内にて。大勢の方が参加されました

浄光明寺境内にて。大勢の方が参加されました

ご住職と参加者

浄光明寺の大三輪御住職のお話に熱心に耳を傾ける参加者の方々

あじさいとやぐら

階段を上って、いざ、網引地蔵やぐらへ

階段を上って、いざ、網引地蔵やぐらへ

網引地蔵やぐら内部の様子

網引地蔵やぐら内部の様子(通常は内部の立入禁止)

逗子市教育委員会 佐藤仁彦による実地解説

逗子市教育委員会 佐藤仁彦係長による実地解説

やぐらの入口の様子

やぐらの入口の様子

【第2部】中間報告

逗子市教育委員会の佐藤仁彦係長より、27年度に実施した比較研究結果についてスライド等を用いながら以下の報告を行いました。

やぐらとは何か?
  • 切り落とした崖面に平面方形(長方形)の横穴を掘り、石塔や石仏を建てて供養する中世の石窟。
  • 床面や石塔内に穴を穿って納骨するものが多い。
  • 規模が大きく、仏殿や座禅窟等として機能したと考えられる窟もある。
  • 主として13世紀後半頃から15世紀頃に営まれた(後世まで供養が続く例もある)。
やぐらの構造
  • 出入口にあたる羨道、平面方形もしくは長方形の玄室(主室)を持つのが一般的。
  • 天井部は平天井が主で、切妻屋根を模した家型(船底型)等もある。
  • 床面は平坦で、奥壁・側壁に沿って壇を設ける場合もある。
  • 壁近くあるいは玄室中央の床面に穴をあけ、納骨して石塔や石仏を建てる。 壁面に石塔等をレリーフする例もあるが少ない。
  • 壁面は基本的に垂直。奥壁や側壁に龕や長押状の掘り込みを作り納骨する場合もある。
  • 木製扉等で閉塞した痕跡、内部に柱や梁を設け木造堂としたと思われるものもある。
三方に壇を持つやぐらの例(まんだら堂やぐら群)

三方に壇を持つやぐらの例(まんだら堂やぐら群)

図1_600x530

国内の中世石窟遺構の分布
  • 上総・安房(千葉県富津市、館山市、南房総市他)多数
  • 陸奥(宮城県松島町)瑞巌寺ほか
  • 加賀(石川県小松市)滝ヶ原町八幡神社
  • 能登(石川県志賀町)地頭町中世墳墓窟
  • 越中(富山県高岡市)円通庵遺跡
  • 豊前(福岡県豊前市)如法寺、夫婦木ほか
  • 豊後(大分県大分市)曲石仏、少林寺、(大分県豊後大野市)普済寺跡ほか
中世石窟遺構分布図

中世石窟遺構分布図

寺院境内の例(東林寺跡)

寺院境内の例(東林寺跡)

山稜部に群在するやぐらの例(まんだら堂やぐら群)

山稜部に群在するやぐらの例(まんだら堂やぐら群)

上総・安房(千葉県)のやぐら

図9_600x440

やぐらの分布詳細図

やぐらの分布詳細図

千手院やぐら群(館山市)

千手院やぐら群(館山市)

善性寺やぐら群(南房総市)

善性寺やぐら群(南房総市)

水岡やぐら群(館山市)古墳時代の横穴を利用したやぐら

水岡やぐら群(館山市)古墳時代の横穴を利用したやぐら

七ツやぐら群(南房総市)山稜部に群在するやぐら

七ツやぐら群(南房総市)山稜部に群在するやぐら

陸奥(宮城県)のやぐら

図13_600x440

円通院洞窟群(松島町)

円通院洞窟群(松島町)

雄島(松島町)

雄島(松島町)

加賀・能登・(石川県)、越中(富山県)のやぐら

図16_600x440

滝ヶ原八幡神社(小松市)

滝ヶ原八幡神社(小松市)

地頭町中世墳墓窟(志賀町)

地頭町中世墳墓窟(志賀町)

豊前(福岡県)・豊後(大分県)のやぐら

図19_600x600

夫婦木(豊前市)

夫婦木(豊前市)

曲石仏(大分市)

曲石仏(大分市)

普済寺跡(豊後大野市)

普済寺跡(豊後大野市)

整然とした玄室内部(普済寺跡)

整然とした玄室内部(普済寺跡)


国内各地の遺構を通観して

  • 形態的な異同もあるが、基本的にやぐらと同様の性格を有すると考えられる遺構が各地に存在することを確認した。
  • 寺院との関わりを想定できる遺構や、水陸交通の要衝に立地する遺構が多く、それらの地域と鎌倉の関係が深いものと推測されるが、必ずしも明確ではない。
  • 房総を除き、鎌倉のように長期にわたって広範に造営されることはなく、一時的、局地的もしくは単発的なものに留まった。

現時点のまとめ

やぐらは、供養を主目的として中世の鎌倉とその周辺地域に盛行した施設で、鎌倉との何らかの関係性(法脈等)を足掛かりにこれを採用した地域もあったが、各地に広く拡散(普遍化)することはなかった。
やぐらは、谷戸-山稜部の自然地形を活かしつつ形成された、鎌倉に独特の宗教空間を構成する稀有な遺構である。


>>連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について
>>連続講座第2回「禅宗様建築の成立と発展」の実施結果について
>>連続講座第3回「大仏様の来た道」の実施結果について

連続講座第3回「大仏様の来た道」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。

比較研究の必要性

比較研究とは?

何を比較するのか?

現在までの比較研究の進捗状況

第3回の内容

第3回は、平成28年3月27日(日曜日)に、「大仏様の来た道」をテーマにして、大仏殿高徳院境内を見学し、その後、客殿でスライド等を使いながら、鎌倉大仏の歴史や特徴、さらに発掘調査結果等についての説明を行いました。

第3回は、天候にも恵まれ103名の方が参加されました。

大仏01

境内での実地解説の様子


大仏02


大仏04


大仏03

【第2部】中間報告

鎌倉国宝館副館長の内藤浩之より平成26年度、27年度に実施している比較研究についてスライド等を用いながら以下の報告を行いました。

  • 鎌倉大仏との比較研究先である中国の雲崗石窟、龍門石窟、敦煌莫高窟、楽山大仏、大足石刻について、調査地の概要の説明。
  • 大仏の定義について、仏像の大きさを経典等に書かれたことから読み解いた説明。調査対象は10m前後以上とした。
  • 鎌倉大仏と比較研究を行った中国の作例との比較についての報告。
  • 大仏の来た道としては、北伝ルートと南伝ルートがあるが、仏教及び仏像が発生したインドには大仏がほとんど存在せず、聖地に対する周辺意識や権力・経済力が大仏の造像に大きく関係していると考えられる。
大仏スライド02

高徳院 佐藤ご住職よりご挨拶


客殿

100名以上の参加者で熱気のみなぎる会場内(客殿)


鎌倉国宝館内藤副館長

鎌倉国宝館 内藤副館長によるスライド解説

現時点のまとめと課題としては、以下の点が挙げられます。

  1. 鎌倉大仏は北伝ルートで伝来した巨大仏信仰のアジア東端の作例として貴重であること。
  2. 課題として、国内作例との比較や大仏造立にかかわる思想、配置、礼拝者との関係をさらに研究していく必要があること。

>>連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について
>>連続講座第2回「禅宗様建築の成立と発展」の実施結果について
>>連続講座第4回「やぐらの広がり」の実施結果について

連続講座第1回「鎌倉から始まった禅宗寺院」の実施結果について

神奈川県、横浜市、鎌倉市、逗子市の4県市では、「武家の古都・鎌倉」のイコモスによる不記載勧告、推薦取り下げ後、「鎌倉」の価値を再度掘り下げ、確認するため、平成26年度から比較研究を中心とした基礎的な調査研究を実施しています。その成果を連続講座(平成27年度は全3回)として中間報告しました。

比較研究の必要性

比較研究とは?

何を比較するのか?

現在までの比較研究の進捗状況

第1回の内容

第1回は、平成27年11月15日(日曜日)に「鎌倉から始まった禅宗寺院」をテーマにして、建長寺境内で禅宗寺院や庭園などを見学し、その後、応供堂にてスライド等を使いながら国内外類似資産との比較研究成果についての報告を行いました。

あいにくの天気でしたが、96名の方々が参加されて、たいへん熱のこもった講座となりました。

雨の中の参加者の様子

【第1部】実地解説

境内(山門、仏殿、法堂)を案内しながら、以下の点について解説を行いました。

  • 元弘元年(1331年)につくられた「建長寺指図」を見ながら、当時から主要伽藍が一直線上に並んでおり、現在も維持されていること。
  • 建長寺は、谷戸地形で平地が少ないため、山裾を垂直に切り下げ、中央部を埋め立てて敷地を確保する谷戸造成によって造られていること。
建長寺01

実地解説の様子


建長寺03

【第2部】中間報告

鎌倉市歴史まちづくり推進担当担当部長の桝渕規彰より平成26年度、27年度に実施していた比較研究についてスライド等を用いながら以下の点について報告しました。

  • 建長寺については、立地・造成、伽藍配置について、国内外の類似資産との比較研究を行った。
  • 比較を行った他寺院との相違点は、主に2点あること。狭隘な谷戸に立地し、山裾を垂直に切り落として境内を確保する造成は、鎌倉の寺院固有の立地及び造成法であること。さらに、方丈裏の曲池を伴う庭園は、建長寺から発生した日本独自のあり方である。
  • 比較を行った他寺院との共通点として、一直線上の主要伽藍の配置が挙げられる。京都五山をはじめとする国内大禅宗寺院は、南宋五山から導入された建長寺の伽藍配置に倣ったものである。
  • 現時点でのまとめとしては、建長寺の直線的な主要伽藍配置は、中国南宋五山との交流によって導入され、方丈裏庭園という新規の要素を交えて、我が国における伽藍配置の基本的在り方として大禅宗寺院に取り入れられ、現在も維持されている。この意味において、建長寺は日本における禅宗寺院の始まりである。
スライド02

建長寺 高井総長(当時)よりご挨拶


スライド03

神奈川県 人見部長より開会の挨拶


スライド01

応供堂にて中間報告をする桝渕部長


応供堂全体

応供堂の外観の様子


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